その昔ペルセウスが現れるまで、ゴルゴンの三姉妹は一つの目と一つの歯を共有して不自由しなかったようです。確かに誰かが失くす心配が無いのであれば、大抵のものは必要な時だけ借りれば済むのです。そんな発想が、近年確実に広まりつつあるクラウドにも見ることができます。今でも従来型の有線LANでつないだ社内ネットワーク内に、ハードウェアもソフトウェアもその他諸々のデータもすべてを収めているのが主流です。しかしクラウドを利用すれば、それらの利用者の負担が減ります。というのもクラウドサービスでは、これらの情報のかなりの部分を外部事業者のサーバに集中して預けることで一元的に管理し、利用者はネットワークを経由してそのデータ等にアクセスすることで必要に応じたサービスの提供を受けるからです。そしてこれはアクセスする環境さえ整えられれば、スマートフォンやタブレットを活用して外部からでもサービスを受けられるということになり、これまでのネットワークでは考えられないほど自由で柔軟な使い方が可能になるのです。もちろんスマートフォンやタブレット端末は、無線LANを使って接続しなければなりませんから、従来の有線LANからの転換は不可欠です。そしてこのような社内外での無線LANによるアクセスを、安定的に実現するためのシステムを構築することがネットワークエンジニアには求められます。
しかし良いことばかりではありません。近年頻繁に起きている個人情報の流出が示す通り、プロによるサイバー攻撃が激化しています。その方法にはIEの脆弱性を突いたものやWindowsのショートカットファイルの脆弱性を突いたものがあり、今後はスマートデバイスに対しAndroidの脆弱性を狙うものも増える可能性が高いといえます。今やソフトウェアは交通機関はもとより水道やガス、電気などのライフラインを動かすほとんどのシステムに組み込まれているため、制御系のシステムが狙われればその影響は計り知れません。このようなリスクを回避するためにセキュリティの強化をどう具体的に実現するのかという問題解決のための知識とスキルが、アプリ開発の現場にもサーバ構築の現場にも求められることになります。
こうしてみると、クラウド化が利用者にもたらすメリットが理解され、歓迎され受け入れられるのも時間の問題であり、その一方でエンジニアに求められる役割はいよいよ高度になりそうです。これまでは常識的であったエンジニア内の職域による棲み分けは許されなくなり、エンジニアはプログラミングとネットワークの両方の知識をもち、顧客が利用するシステム全体としての最適化を提案できなければならなくなるのです。
フリーランスでも会社員でも、ネットワークエンジニアにぜひ読んでもらいたいおすすめの書籍が、「インフラ/ネットワークエンジニアのためのネットワーク技術&設計入門」です。入門というだけあり、画像が豊富で、ネットワーク初心者が体系だてて学習できる内容になっていますが、中堅レベルのエンジニアでも参考にできる具体例など、実務において役に立つ情報が満載の良書です。ネットワークエンジニアなら手元においておきたい本です。
これからの時代に求められるネットワークスキルとは、あらゆるモバイルデバイスを受け入れながら強固なセキュリティを確保し、安定して動作するネットワーク環境を構築、管理するスキルです。特にセキュリティに関しては、常に最先端の情報と知識を仕入れ、自らスキルをアップデートしておく必要があるでしょう。フリーランスのネットワークエンジニアとして成功するには、時代の動向とこの先のトレンドをいち早くつかみ、前倒しで時代を乗り切る勢いを持ちましょう。
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フリーランスのネットワークエンジニアが目をつけるべきは、ビッグデータの分野です。クラウドに負けず劣らず注目を集めているトレンドキーワードといえば、ビッグデータです。経済活動におけるビッグデータの活用は、まだ成功例も少なく、かつ、データベース解析などビッグデータ関連のスキルと知識を持つエンジニアも少ないため、今のうちから習得しておけば今後必ず役に立つスキルといえます。ビッグデータ関連の案件は今後増えていく見通しです。